
こんにちは、ロプロス(@ropross)です。
昨年(2013年)10月の東北旅行のときに、会津東山温泉の「向瀧」に泊まってきました。
会津東山温泉は、8世紀に行基により発見されたと伝えられる歴史ある名湯で、江戸時代には会津藩の湯治場として栄えました。
現在は20軒以上の宿が営業していますが、今回泊まった「向瀧」は、会津藩上級武士の指定保養所を前身に持つ由緒ある旅館で、その建物は国の登録文化財制度の第一号に指定されています。
以前から雑誌などで見てずっと憧れていた宿なのですが、旅館という枠を超えた貴重な建築物に宿泊できるとあって、いやがうえにも期待は高まります。

会津若松の街中から車を走らせると、わずか10分ちょっとで東山温泉に到着。驚くほどの近さです。
湯川にかかる橋を渡ったところに、目指す「向瀧」は建っています。
おおおー、これはすごい!なんという存在感!素晴らしく風格のある建物です。

千鳥破風の玄関。
今も現役の旅館として営業しているのが信じ難いような、威厳と貫禄を感じさせます。

玄関横には登録有形文化財の石碑が建てられています。

館内に足を踏み入れると、そこは和の雰囲気が溢れた空間が広がっています。
「フロント」ではなく「帳場」と呼ぶのが相応しい佇まいです。

仲居さんに案内され、奥へと進んでいきます。

登録有形文化財のプレートが誇らしげに飾られていました。

板張りの廊下は、惚れ惚れするほどピッカピカに磨き上げられています。


案内された部屋は、川側で広縁付きの10畳の和室。
由緒ありそうな書や掛け軸が飾られています。
今回は1泊2食16,800円の一番安い部屋だったのですが、この他にも自慢の中庭が見える部屋や、風呂付きの部屋、宮内庁指定の特別貴賓室があるそうです。

お抹茶と羊羹を出していただきました。

浴衣やタオルなど。足袋も用意してくれてるのはいいですね。

女性には嬉しい鏡台も。

お茶や冷たい水も用意されています。

川の流れを眺めながら寛げる広縁。

広縁からは、すぐ目の前を流れる湯川を眺めることができます。

洗面所とトイレ。
歴史ある古い建物だけど、シャワートイレでした。
部屋ではWi-Fiも繋がり、現代的な快適さも備えているのは高ポイントですね。

旅装を解き、ちょっと落ち着いたところで、館内を散策します。
建物は斜面に建っているので、階段も結構傾斜がキツく、もちろんエレベーターなどないので、上のほうの部屋に泊まると昇り降りが大変そうです。

建物に囲まれた空間には日本庭園が設えてあります。



中庭は回遊式になっているので、お散歩することもできます。



ほんとこんなすごい建物に泊まっていいの?って感じです。

庭園では、春には桜を、冬には雪見ろうそくを楽しめるそうです。
また今度はどちらかの季節に泊まりに来よう。

この宿には2ヶ所の大浴場と3ヶ所の貸切風呂があります。
まずは空いていれば無料でいつでも入れる貸切風呂を覗いてみました。
こちらは「瓢の湯」。
貸切風呂のサイズはいずれも小さめで二人で入ってちょうどいいくらいです。
どこか昔ながらの湯治場の浴場を思わせるような、クラシックな雰囲気がいいですね。
浴槽には綺麗に澄んだ透明なお湯が満たされています。泉質はナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉(含塩化土類-芒硝泉)で、pH7.88の弱アルカリ性。自然湧出のお湯が源泉掛け流しになっています。

浴室の天井にはそれぞれ違った紋が彫られていました。

こちらは「鈴の湯」。
3つの貸切風呂はほぼ同じような雰囲気ですが、浴槽の大きさや配置が微妙に違います。

3つの貸切風呂の中で最も広い「鳶の湯」。

お湯はカルシウム分を含んでいるので、湯口には温泉成分が付着しています。
温泉らしさを感じさせてくれますね。

ここで一旦玄関を出て、この名建築を改めて外から鑑賞します。

増築を繰り返しているため、複雑な構造になっています。
全部で4棟の建物があるそうですが、その全てが登録有形文化財に指定されているそうです。

この棟が、今回私達が宿泊している部屋があるところ。
この宿で最も古い建物で、明治6年の創業当時からあるのだとか。築140年以上の建物に泊まれるってすげー!

2ヶ所ある大浴場のうちのひとつ、「きつね湯」。
こちらのお湯はかなり熱めです。
貸切風呂と同じく大浴場のお湯も加水・加温・循環・消毒を一切しない源泉掛け流し。湯船の縁から溢れるお湯を眺めているだけで嬉しくなりますね。

「きつね湯」の前の大理石が使われた洗面所も味わいがあります。

館内に明かりが灯ると、ひときわ艶っぽい雰囲気になってきました。

さて、お待ちかねの夕食の時間です。食事は部屋に運んできてくれます。
先付は盆地長葱の鰹掛け。前菜はキノコと栗の白和え、蒸しカボチャ、卵の黄身寿司、酵母牛の美酒佳肴焼き、赤かぶの甘酢漬け。
いずれも細かく手のかけられた品々です。
お刺身の磐梯鱒は程よく脂がのっていて美味しい。

会津地鶏とキノコの朴葉焼き。
味噌とネギの風味が鶏肉の旨味を引き立てます。

会津の郷土料理。ニシンの山椒漬け
ニシンの強い旨味と山椒の香りがよく合います。

そして、メインディッシュ的存在の鯉の甘煮。こちらも会津地方では古くからよく食べられている伝統料理だそうです。
これが絶品!こってり甘くて濃厚なタレが鯉に良く合ってめちゃくちゃ旨いっ!
結構ボリュームがある品なので、食べ残した分は真空パックにして持ち帰ることができます。数日なら冷蔵しなくても大丈夫なので、この先も旅程が続くときにもありがたいですね。

こちらも会津を代表する郷土料理、こづゆ。大河ドラマ「八重の桜」にも登場していましたね。
ホタテの貝柱で出汁をとったつゆに、里芋、人参、シイタケ、豆麩、銀杏など、様々な具材が入っています。上品なつゆの味わいが絶妙です。

お芋と古代米のおこわ。
ホクホクしたお芋ともっちりしたお米のコンビがいい。

鯉の揚げ出し。鯉の揚げ物って始めて食べたけど、これまた美味しい。

デザートは会津りんごのジュレ掛け。爽やかな酸味がいいね。
会津地方の郷土の味覚を中心とした料理の数々は、決して豪華ではないものの歴史ある旅館に相応しい内容で、非常に満足度の高い夕食でした。ごちそうさまっ!

夜の館内もしっとりとした情緒に満ちています。

夜の庭園の雰囲気も素晴らしい。眺めていると時間が経つのも忘れてしまいそうになります。

ライトアップされた旅館の外観もかっこいい!

もう1ヶ所の大浴場、「さるの湯」に入りに行きます。
こちらは壁に裸婦のレリーフが彫られているなどモダンな雰囲気。ちなみにレリーフは女湯にはないそうですw
「きつねの湯」と違って、こちらのお湯はちょうど入りやすい温度で、ゆったりとお湯を愉しむことができました。
「向瀧」の浴場には露天風呂がないのですが、いいお湯と味のある浴場があれば露天風呂なんてなくてもいいな、と思わせてくれます。

翌朝の朝食。
派手さはないものの、ほうれん草のかつお掛け、茄子の揚げ浸し、筑前煮など、山里の幸を中心とした身体に優しそうな品々が並んでいます。
ちゃんと温泉卵があるのも嬉しい。

夕食では刺身で出た磐梯鱒のせいろ蒸し。脂の旨味が際立っています。

チェックアウトの時間になったので、去りがたい気持ちを抑えて部屋を出ます。

今度泊まるときにはこの中庭が眺められる部屋にしたいなー。

まとめ
もう滞在中に何度「すごい」と口にしたかわからないほど、風格のある名建築に圧倒されっぱなしでした。ただ時を重ねただけの建物とは一線を画す、威厳と品格が備わっていますね。この歴史ある貴重な建築を守りぬいていこうという、宿に関わる人達の矜持を感じました。
建物だけでなく、源泉掛け流しのお湯の良さや浴場の雰囲気、会津の郷土料理を中心とした食事など、ハード面でもソフト面でも文句のつけようがなく、極上の時間を過ごすことができました。
さらに特筆したいのが、接客の素晴らしさ。これまで何軒もの旅館やホテルに宿泊してきましたが、ここがナンバーワンと言い切れるほどです。接した従業員の方々が皆揃って極めて丁寧でありながら堅苦しさもなく、まさに日本の誇るおもてなしの心を体現している宿と言えると思います。
これで宿泊料金が1万円台というのは、コストパフォーマンスも上々でしょう。
歴史の情緒にどっぷりと浸かりたいという人には、強くお勧めしたい名旅館ですね。ここで過ごした時間は、ずっと忘れられない想い出として残ると思います。
ではでは、またー。
(旅行日:2013年10月28,29日)



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